ベランダで作る野菜の記録


by yoshi09001

Writing Skills in Translation

Writing Skills in Translation (Turning a Rough Draft into Effective English)
(2012/9/8, JAT主催セミナー)に出席したので、その内容のメモ:

前半の約1時間は講師である Lynne E. Riggsさんの経歴や考え方について、Alison Wattsさんがインタビューする形式で進められた。1970年の来日からタイピストとしての仕事、徐々にエディターとしての仕事にシフト、SWET(Society of Writers, Editors, and Translators http://www.swet.jp/)の立ち上げ、その後の活動内容など。その後半は会場からの質問も交えて質疑応答。

1.プロになるためには何が必要か?
経験はもちろんのことながら、取り組む姿勢が大事、さらにクライアントが何を求めているかを常に考えること。

2.高品質な翻訳についてクライアントに対する教育が必要。なぜそう訳したのかの説明も十分に。

3.ドラフトは少なくとも3回は見直し、完成したと思っても時間をおいて寝かせること。常によりよい文章にするよう、何回でも推敲する。

4.英語を母国語とする人々が読んですんなり読め、違和感がないことが大事。英語で考える。

5.翻訳は1通りではなく、異なるいくつもの形で表現してみる。どれがベストかを考えて選択するのが良い。

休憩をはさんだ後半は6件の日英翻訳例とその書き直しについて1つずつ説明。
やはりリライトされた文章の方がすんなり読めて頭に入ってくる。さすがです。

例文1.ポイントは主語の選び方
「ユビキタス環境では・・」 を元の訳文では単純に In a ubiquitous environment, としているが、リライトした文章ではMany servicesを主語にしながら、ubiquitous computingという表現も使ってまとめている。これなど、日本人が陥りやすいpitfallの良い例。何を主語にもってくるか、いつも自分が悩むところ。その他、「私たちは」を「we」とはせず、具体的な会社名等に変えることの必要性など、自分もよくやること。ThisとかItを使う場合のambiguityを避けることの大事さも。

例文2: Hubris (over-foreignization)
原文にあるニュアンスをどう伝えるか。うまく表現できずにニュアンスを消していないか・・。二重引用符の使い方、原文で括弧になっているからというだけの理由で無理に使わなくてもいい。あくまで自然な表現にすることが大事。社交的な文言など無駄な修飾は省いて良い。

例文3:Avoiding oddities; balancing jargon with readability; strong first words of sentence; which and that clauses slow down sentences
千葉銀行の広報文書。広域千葉県を“Wider Chiba”とするのはNSEにとって違和感がある。これは“Greater Chiba”が妥当(そういえば、Bostonの場合も“Greater Boston”だったなぁ、などと思い出した)。問題は何年もその表現を使ってきたとか、公式にそうなっていた、といった場合だが、できるだけ修正していくことが必要。読み手が分かるようにしなければ意味がない。

関係代名詞を使って ・・・, which という形の文章構成は嫌い。日本人には馴染みやすいかもしれないが、別の表現方法があるはず。

「圏央道」といった固有名詞を訳す場合でもそれがどのような道路なのか、括弧付きの説明を入れることも必要。日本人なら漢字からすぐにイメージできることでも、何のことかNSEには分からない。

例文4: インターネットは・・・
全体として日本語の表現に忠実だが読みにくい。日本語に引きずられ過ぎている。

例文5:倉敷の情景を描写した詩的な文章
蔵屋敷をstorehousesとしているが、正確にはmansions and storehouses
古き良き日本の風情をnostalgic Japanese tasteとしているが、リライトではnostalgic “good old days" ethos とした(自分だと、ethosはまず出てこない単語)。
詩的な文章は詩的に訳すことが必要。リズムが大事。
こういう文章は自分には無理だなあ。できても相当に時間がかかりそう。

例文6: 設計の思想
原文の言いたいことをよく理解して、筋の通った主張のある文章にしないといけない。

各例文の解説の後、質疑応答が行われ、最後に、日英翻訳をチェック/編集するときのチェックポイントが33項目にまとめられた「A Translation Editor’s Checklist」の各項目について簡単な説明が行われた。これも後でまとめておきたいポイント。

以上、Lynneさんの個々の指摘は実に納得のいくもので、いずれも読み手の立場になって書くことが大事だ、ということがポイント。自分がいままで日英翻訳で迷ったり、悩んできたりしたことに対する1つの回答であり裏付けになったような気がする。特に、日本語の社交辞令的な表現は日本語では必要だが英語では無用なので省略すべきとかいう考え方に納得。

全体として共鳴する部分の多いセミナーだった(謝)。
English is a noun and verb language. という一言がなぜか印象に残った。
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Commented by H.S. at 2012-09-11 13:59 x
こんにちは。
先日JATの交流会でお会いした 特許翻訳者の H. S. です。
最後の "English is a noun and verb language."は、アメリカの詩人にも同じことを言われました。英文を作成するときには、この点を留意するように、とのことです。英語の根本的な大切な特性なんですね。
それと"Simplicity"。イギリスよりもアメリカで盛んにこの言葉を聞きます。
"Run-on sentences"は、具体的にどういうことを指しているんでしょうか?…これがいまだに ? です。 
Commented by Yoshi09001 at 2012-09-12 09:29
H.S.さん、コメントありがとうございます。あまりこのブログをチェックしていなくて返事が遅れ、すみません。Run-on sentencesはだらだらと続く長ったらしい文章、と考えましたけどどうでしょうか。

それと、このセミナーに関連して、チェックリストを日本語の解釈付きでここに掲示するつもりでRiggsさんに打診中です。こちらから私の解釈を伝えてあり、少し違うところもあるのでコメント+例文追加するとのことでした。今はそれを待っています。
by Yoshi09001 | 2012-09-09 15:11 | 翻訳 | Comments(2)