ベランダで作る野菜の記録


by yoshi09001

洋書の森 ウィークエンドスキルアップ講座、土屋政雄先生の対談

洋書の森 ウィークエンドスキルアップ講座(2018/6/30

名訳が生まれる背景 ~翻訳家・土屋政雄と編集者・山口晶が語る翻訳秘話~

前から一度お話を伺いたいと思っていたカズオ・イシグロ作品の翻訳で有名な土屋政雄さんの、早川書房編集本部長の山口晶さんとの対談が神楽坂の日本出版クラブ会館で行われました。とても印象に残ることが多く、ポイントになるところをメモしてきたので、忘れないうちにここに書き留めておきます。

1. 翻訳家になるまでの話

中学校から高校にかけての英語とのつきあい、落語や講談の本を読みふけったこと、高校のときに1年の留学、帰国後ふたたび産経スカラシップで1年の留学とさらに延長して1年の滞在。その後、大学紛争やアルバイト翻訳、翻訳会社への登録、IBMのマニュアル翻訳を20年以上も続けたことなど。そして文芸翻訳の世界に入ったのは、小さな息子さんに自分の職業を説明するとき、なんでパパの名前が出ないの?と聞かれたことが1つのきっかけだとか。

その後は比較的順調にたくさんの作品をてがけるようになったとのこと。

実務翻訳の世界から文芸翻訳の世界へと華麗な転身。おそらく珍しい例だろうとは思いますが、原文を読んでしっかり理解するということでは一緒のことだと言われると、たしかにその通りだと思います。

2. 土屋流翻訳術、3つの秘密

(1) 原文と訳文のデータ量(バイト数)が一致するのが理想ではないか、という考え方

この話は前から聞いていたのですが、やはりご本人から説明していただくと、なるほどと思います。実は私も、翻訳するときはTradosなので左に原文、右に訳文が置かれますが、ざっと訳したとき、その長さ(行数など)がほぼ一致しているかどうかを確認するようにしていて、訳もれのチェックになるだけでなく、冗長な表現を避けるためにも有効ですね。

(2) フォグカウント、原文の難易度を1文中の単語数と難しい単語(シラブルが3つ以上の単語)の数で判定し、どの程度の英語学習年数が必要かを見分けるやり方

こういう視点で難易度を判定するというのも面白いと思います。ある程度自動的にやってくれるサイト(Gunning Fog Index)もあるようなので暇なときにでもチェックしてみようかと。

(3) 自在性。語順の変更や文、パラグラフの入れかえまでを含め、理解したことを自分の言葉で表現するということ

このところで一番印象に残ったのは、「理解したということは、その内容を自分の言葉で表現できるということだ」という考え方です。原文を読んでしっかり理解して、それを自分の言葉で表現していくとき、語順の変更や文、パラグラフの入れかえも自在にやっていいと。また、翻訳はパラグラフ単位でやるのが基本、というのもよく分かります。自分が日頃から考えていることが整理されたみたいで、少し嬉しくなりました。

3. 事前質問への回答

事前によく練られていたようで、すばらしい質問ばかりでした。特に印象に残ったお話は、

(1) 毎日の仕事の始めに、前日までに翻訳したところを読み返していき、時間が余ったら次に進むという翻訳の進め方。その日の体調や気分で訳文にむらが出来ないようにするための1つの方法ですね。土屋さんほどではないですが、私も毎朝の仕事の始めには前日の部分を読み通すことはやっています。

(2) 悪文を悪文のまま訳すとか、難しいのを難しく訳す、というのは無理でしょう、ということ。翻訳者にできるのは「理解して、自分の言葉で表現する」ことだけ。分かりやすくないと商品にならない。

(3) 翻訳力をつけるために海外の作品を大量に読むことについて、土屋さんは、たくさん読むことより、大量に翻訳することの方が大事だと言われます。漫然と読んでいても力はつかず、やはりしっかり理解しながら訳すことで力がついてくるのだと思います。その通りですね。

4. 懇親会

今回は神楽坂では最後の講座/懇親会ということもあり、いつもより参加者が多く、たいへん盛況でした。たくさんの方にお会いできましたし、土屋先生と並んだ写真まで撮っていただきました。ありがとうございます。今回は話に夢中で写真はあまり撮れませんでした。

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by Yoshi09001 | 2018-07-01 08:04 | 翻訳 | Comments(0)