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ベランダで作る野菜の記録


by yoshi09001

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昨日(1/14)は「翻訳者視点で機械翻訳を語る会」に参加してきました。


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詳しい内容はterrysaito さんの「20190114「翻訳者視点で機械翻訳を語る会」関連ツイートまとめ」togetter.com/li/1308905 にあるとおりなので、ここでは特に紹介しません。

松田さんのお話も高橋さきのさんのお話もその通り頷ける内容で興味深く聞かせてもらいましたが、最後のセッションで機械翻訳/ポストエディット(MTPE)の体験談を話してくれる人が何人もいて、これまであまり気が付かなかった最近の翻訳業界の事情がようやく実感となって迫ってきた感じがします。

私は発言しなかったのですが、この世界で17年ほど翻訳業を続けてきた経験から、考えさせられることや言いたかったことがいくつかあったので、ここにまとめておくことにしました(長文です)。


1. 自分の経験から

あの場でこれを言い出すと、また老翻訳者の自慢話か、昔とはちがう、とか思われるのは当然ですし、場がしらけてしまいそうなので手が挙がりませんでした。しかし、悲観的な話ばかりでなく、何らかの成功例を示すことも我々の役割だと思って書いています。

私はMTPEのオファーをもらったことは一度もありません。あったとしても、即座にお断りしていると思います。また、Tradosの使用が前提の仕事も原則として受けていませんし、受ける場合もマッチ率によるレート計算は拒否しています。

それでもこの17年間、特に仕事が長く途切れることもなく、ずっと続けてこられました。いま思い返してみると、最近の仕事はほとんどが特定のソースクライアントからの「ご指名」案件になっており、それだけで十分な量があります。どうしてそうなったのでしょうか。

1

お客さんがとても喜んでくれて、「これまでの翻訳者さんはこんなにうまく訳してくれなかった。技術的な内容が良く分かっている。これからはこの人に回してください」とのことで、それからはその会社の案件は優先的に回します、とコーディネータの人から言われたこと。その後、その翻訳会社の案件はその会社からのものが中心になり、今もずっと続いている。

2

めったにそういうことは言わないネイティブチェックの人がとても褒めていました、とコーディネータの人から言われ、その後、その関係の仕事や新製品プレスリリースの仕事が継続的にもらえるようになった(コーディネータの信頼を得た)。

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知り合いの翻訳者から紹介された翻訳会社。何件かの英訳を受けたあと、「お客様が絶賛しています。これからも是非よろしく」となり、長めの案件を回してくれるようになった。

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知り合いの翻訳者から紹介されたソースクライアント。最初は手続きが面倒だったが、一度通してしまうと後は簡単になり、発注元からは信頼されるし感謝されるし、不明点の回答もすぐにもらえるようになり、互いに協力して優れた成果物を作り上げる体制ができた。レートも良い。

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レートが低かった翻訳会社。自分の得意分野だったので翻訳速度は上がり、この仕事を始めた頃はこの会社が中心だった。しかし数年前に単価改定があり、そのときに少し値上げしてもらったものの、担当コーディネータの退社なども重なり、それからは受注が激減した。ところが、トライアル案件を依頼されて納め、その後そのクライアントから選定されて1回受注。さらに継続案件も「同じ人にお願いします」という「ご指名」になった。

その他にもいろいろありますが、これらの例に共通しているのは、自分が納得できるまで11件の仕事をていねいに仕上げたことで「お客様の信頼と満足」が得られたことです。そして、気にいってもらえる会社がいくつかできれば、自分一人分の受注量には十分すぎるほどになります。

上質な翻訳を求めるクライアントは多いと思います。優れた翻訳者を確保することは非常に難しいことです。そういうクライアントが機械翻訳に満足するはずもありません。


2. MTPEの場合はどうでしょうか

機械翻訳が気にいったから同じ人に、となるでしょうか(笑)。

MTPEの翻訳成果物に責任を持つのは誰でしょうか。当然ながら翻訳者です。機械が訳したのを編集しただけだから、中味は知らないよ、とは言えませんよね。そしたら、人間翻訳と同じレベルの品質を出すためには、機械翻訳がかえって邪魔になりませんか?

MTPEでも頑張って優れた翻訳に仕上げたとしても、お客様がそれを評価してくれるでしょうか?くれるかも知れませんし、そうでもないかもしれません。

MTPEばかりやっていて、この稼業をずっと続けられるでしょうか。高齢になればスピードや集中力は落ちます。68歳の私など、1日平均4時間くらいしか仕事はできませんが、ご指名案件を増やしていければ、ずっと長続きすることでしょう。

怖いのは新参翻訳者の成長を阻むMTPEの罠です。この罠にはまりませんか?そして、そのバリアからうまく抜け出せますか?

MTPEでも質的に問題ないレベルの成果物が出来る分野もあると思いますが、そうした分野は、実は誰でもできる簡単な仕事ばかりなのではないでしょうか。誰でもできる簡単な仕事では十分なレートも期待できません。


3. 生き残りのために大事なこと

翻訳品質

言うまでもないことですが、翻訳者が生き残るために必要なのは「翻訳品質」だと考えています。ずっと前からそう思っていますし、今後もこの考えが変わることはないでしょう。翻訳者にとっては自分の作品がすべて。お客様に気にいってもらえるかどうかが生き残りのポイントだと思います。気にいってもらえないお客様も多いでしょうが、ちゃんと分かってくれるお客様も必ずいます。そして、そういうお客様をいくつか持つことで、MTPEの罠から抜け出すことができると思います。そのためには、いい加減なところで妥協しないことです。

翻訳会社を選ぶこと

MTPE化を推進しているような会社とは早めに手を切った方がよいのではないでしょうか。翻訳会社が翻訳者を選べるのと同様に、翻訳者も翻訳会社や得意先を選ぶことができます。今の位置に安住しないことです。

実力を上げること

自分の訳文の品質を客観的に評価できていますか?自分だけで納得してしまっていませんか?なんだかんだ言っても、この世界は実力がすべて。能力を落とさないためには、常に磨いておかないといけません。他人の優れた翻訳を見たり、自分の訳を見てもらったりすることも有益です。私は今も(金子先生の青山ブックセンター翻訳教室のOBOGによる)10人くらいのメンバーによる勉強会を毎月開いていますが、上手な人の翻訳を見ることはとても役立ちますし、自分のレベルも再確認できます。

また英訳の場合はネイティブチェッカーに見てもらうことで自分の癖が分かり、だんだん失敗が少なくなります。信頼できるチェッカーを確保しておきましょう。

難しい仕事にチャレンジすること

難しい仕事は一般にレートも高いし、簡単な仕事は安いです。これは当然のことだと思います。そして、難しい仕事の方が、やりがいもあります。MTPEは避け、困難な仕事にチャレンジしているうちに実力がついてきます。


4. 楽観主義

先日のマインドフルネスの集まりでのことですが、悲観主義だけでは前に進めない、という話が印象的でした。現在の翻訳業界におけるMTPE化の波を単に悲観的に捉えるのではなく、このような動きをチャンスと捉える楽観主義も必要なのではないでしょうか。

MTPEによる翻訳者の淘汰がこれからも進んでいくなら、そこから一歩抜け出して、自分が勝ち組になることも可能なのではないでしょうか。この業界はよくも悪くもフリーランスの世界です。自分のゴールは自分で設定し、思い通りにやっていける世界です。

MTPEか人間翻訳か、10かと言う議論ではないとも思います。


5. 翻訳会社のミッション

翻訳者の発掘と育成を図りながら翻訳業界全体のレベルアップをしていくのも翻訳会社のミッションではないでしょうか。育成した翻訳者をクライアントに結びつけてWinWinの関係を築いていくことで、業界全体の発展につながるのではないでしょうか。クライアントに言われるままMTPEを推進していても、そのような成果は得られず、かえって全体としてのレベルダウンにつながってしまいそうです。

以上、少し偉そうなことを書いてしまいましたが、昨日のセミナーで感じたこと、そのままです。何かの役に立てば嬉しいです。


by Yoshi09001 | 2019-01-15 11:47 | 翻訳 | Comments(0)

RUN + ヘトヘト + マインドフルネス・ワークショップ」

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昨日(12日)開かれたこの集まりは、「心がヘトヘトなあなたのためのオックスフォード式マインドフルネス」の訳者である上原裕美子さんと、「限界を乗り越える最強の心身」の訳者である松丸さとみさんの二人によるトークイベント+日蓮宗のお坊さんによる「マインドフルネス的坐禅」の実習で、都内某所で行われた。

最近はめまいの持病に悩まされたり、いろいろと心配事があったりするので、このイベントが発表されたとき、何かヒントが得られるかもしれないと思い、すぐにエントリー。松丸さんとも上原さんとも知り合いなので、いろいろ教えてもらうつもりで気楽に参加してみた。

いずれの本もすぐに買って読み始めてはいたのだが、「限界を乗り越え」は1/3くらい、「「心がヘトヘト」は2/3くらいまで読み進めたところで当日になってしまった。

松丸さんと上原さんがどういうきっかけで知り合ったのかも興味があったが、二人とも同時期にマインドフルネスがテーマの訳書を出されたこと、二人ともランナーで、ホノルルマラソンに参加した経験があることなど、人と人とのつながりはなかなか面白い。


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トークはお二人の関係やそれぞれの訳書の紹介から始まった。松丸さんの「限界を乗り越える最強の心身」はランとマインドフルネスの関係に興味を持つ松丸さんが読んで面白かったこの本の企画を出版社に持ち込んで訳書につなげたもの。すごい行動力だ。

「心がヘトヘト」の方は、鬱病やそれに近い人に向けたマインドフルネス実践のための6週間のコースを解説するもの。

トークは上原さんがリードする形で進められ、まず松丸さんの話から。ちなみに、上原さんの話の進め方はとても上手で、事前に作ったメモに時折目をやりながら、流れを途切れさせずスムーズに進めていくところが素晴らしい。慣れているのだろうか。上原さんのファンになりそうだ。

お二人の話で興味深かった点を二点だけ紹介。

マインドフルネスとは、たとえば玄関の鍵をかけ忘れて駅まできてしまったとき、そのことを後悔したり(過去)、泥棒に入られたらどうしよう(未来)とか考えるのではなく、今現在のことに意識を向けることだと理解している。気付き(Self-awareness)を得ることが大事(上原さん)

続けて走っていると、ある時点で頭が真っ白になることがあるのは、実はマインドフルネスじゃないのか、という発想からいろいろ探してこの本に行き着いた。この著者の父親(ChögyamTrungpa Rinpocheがアメリカで広めた「Basic Goodness」は、仏教でいう「仏性」のことで、人間が本来持っている善性(松丸さん)

お二人とも話が上手で、1時間弱ほどのトークはあっという間に過ぎ、少し休憩をはさんで次はお坊さんによるマインドフルネス坐禅の実習。

坐禅は数年前に松丸さん他数人で何回かお寺に通ったこともある。ただ私は身体が特に硬いので正式な座り方もできないし、すぐに足が痺れたりして苦痛だったが、それなりに楽な姿勢でマインドフルネスをやってみると、これなら自宅で椅子にすわっているときでも、寝ているときでもできそうな気がしてきた。特に寝ながらマインドフルネス瞑想を試すとすぐに寝付けそうな気がする・・。


今回のイベントに参加できてとてもよかったと思う。これから自分の生活の中に瞑想の時間を組み込んでいけるかどうか、ランニングは直ぐに心臓が苦しくなってしまうので苦手なのだが、少し速めの歩きでも同じような心境になれるかもしれないと思うし、無心に畑仕事をしているときも同じような状態になれるかもしれない。


by Yoshi09001 | 2019-01-13 09:44 | 全般 | Comments(2)